お売りできませんので、作り方を公開します
GDCの時もそうでしたが、7月のプロダクションEXPOと8月のCEDEC、そして10月のCEATECでも沢山の方からこの特大タッチパネルについて聞かれました。「これを売ってほしい」「何台かまとめて発注したい」と言われたのも1度や2度ではありません。タッチパネルそのものはLive2Dと関係ありませんし、仮にお売りしたとしても何かあった時に責任がとれないので、このようなお話は全てお断りしていました。
しかし、複数の大学の先生から「これを使った学会発表がしたい」と言ってもらいました。売ることはできませんが、作り方を公開すれば誰かの役に立つかもしれないと思ったので、ブログで書いてみます。ちょっと長くなりますが。
なお、これはあくまで体験を元にした記事なので、実際この通りにやっても上手くいかないかもしれません。間違ってたり古い情報もあると思います。参考にされる場合は自己責任でお願いします!
作ったきっかけ=等身大キャラをタッチで動かしたい!
今年の始め、社内で「Live2Dを展示会で目立たせたいよね!」「Live2Dの仕組みがパっと分かってインパクトのあるやつがほしいよね!」という話になり、最終的に「Live2Dのキャラクターを等身大で表示できるタッチパネルを作ったら面白いんじゃない!?」と、実現可能かどうかはあまり考えず、まずはそんなノリで必要な機能・要素をまとめました。
必要な機能・要素を4つに絞ったら
まぁYES! 慣れれば一人で1時間もかかりません
必要な機能・要素を4つに絞ったら
こうなりました:
- インタラクティブ:タッチパネルでLive2Dモデルとインタラクティブに遊べる(触れる)
- 等身大サイズ:女性キャラはもちろん長身の男性キャラ、大柄のモンスターなんかも等身大で表示できる
- 携帯性:国内外での展示会に持っていって簡単にセットアップできる
- 低価格:あんましお金をかけたくない
市販のもので何とかなるかな〜と気軽に考えて・・・
まずAndroidアプリを大きく表示できるデバイスがあるんじゃないかと探してみましたが、見つかったのはせいぜい23インチぐらいでしかも未発売という状況・・・出鼻をくじかれ、次に探したのがタッチセンサー付きの液晶モニター。それで見つけたのがSharpの BigPad。なんとこれは最大で80インチの大型のものがある。「コレダ!」と思ったところがピークで、調べてみると、まず縦に置くのが難しい(等身大は無理)、そして梱包時の重さが140kgでサイズもかなり大きくて持ち運ぶのが大変、なにより値段が160万円〜(当時)と意気消沈・・・うーん、やっぱり自分で作っちゃおう!
低価格&携帯性ならリアプロでしょ(たぶん)
BigPadを調べてて痛感したのが、「安く作れて持ち運べる」となるともーやっぱり液晶は難しい。いや、空中に映像が出て来てしかもそれに触れる!なーんて未来っぽいのができたら良いんだけど、そんなのはまだまだ未来の話(そうでもないかも?)。
考えた結果、薄いシートとかパネル的な平面に背後からプロジェクターで投影(リアプロジェクション)するしかないかな、と。コンパクトにまとまりそうだし、画質はフルHDのプロジェクターがあればけっこういい線いく。はず。
タッチセンサーの決め手は、シンプル&ストロング!
(消去法で)リアプロに決めたのは良いけど、道のりはまだ長い。肝心のタッチセンサーをどうするべきか。移動する先々で自分でセットアップしたいので、重要視したのは精度ではなく、いかに簡単にセットアップできて、いかに丈夫か。ということで色々調べた結果たどり着いたのが、こちらの中国のメーカーの赤外線センサー。四辺のセンサーをフレーム状に組み立ててUSBでPCにつなぐと座標情報を出力してくれるという優れもの。このメーカーに問い合わせてみたところ、在庫があって一番大きいサイズがちょうど高さ2mぐらいになる82インチだったので即発注。もっと大きいのとかタッチ精度の高いモデルもあるっぽいけど今回選んだのはシングルタッチのL-seriesというやつ。
発注したものの、組み立てられるのか?動くのか?そもそもちゃんと届くのか?と若干ドキドキ・・・ そんな不安はまったくの杞憂におわり、センサーがかっこいいアルミのケースに包まれDHLで直ぐに届いた。期待通り、組み立てと分解は割と簡単で、四辺のセンサーをコーナーでネジ結合しつつ中の基盤同士をリボンケーブルで繋ぐだけでOK(結構コツがいるけど)。なにより驚くほど軽量。センサーだけなら1kgあるかないか。中国の担当者からメール添付で送られてきたWindows用のドライバーも難なく動き、座標のキャリブレーションもとっても簡単。これは良い。
タッチ面は剛性の高いアクリルで
タッチセンサーはOK、ということで、次はタッチするパネルそのもの。タッチ操作で押してもグニャっとならないようにある程度の厚さと固さが必要。手触りも含めるとiPhoneみたいにガラスにしてみたいけど絶対にすぐ割っちゃいそうなので、透明度が高くてまぁまぁ剛性のあるアクリルに決定。厚さは5mm。本当は82インチ、まるごとパネル1枚でやりたかったけど、持ち運びが大変なので泣く泣く2枚に分割。アクリルパネルはこちらからミリ単位で発注可能なので、タッチパネルの大きさに合わせて発注。お値段は2枚合わせて1万5千円。表面にヨクスベール(?)的なのを塗ると指触りも格段にアップします。
黒い偏光フィルムで明るい場所でも(割と)白抜けしない
アクリルだけだと透明なのでプロジェクターで投影しても映らない。そこで登場するのが偏光フィルム。これをアクリルに貼ると、小学校とかにあった磨りガラスっぽい感じになってプロジェクターの映像が映る。ただし普通の白っぽい偏光フィルムだと、(展示会場は周りが明るいので)映像が白っぽくなってしまう。ということで今回使ったのがこちらの黒い偏光フィルム。これまたミリ単位でカットして送ってくれる。ただこれがペラペラのシートの割に結構良いお値段。カットも全部込みで9万円(貼り付けは自分でやらなきゃいけない)。(探せばもっと黒〜くて安〜い素材で良いのができそうな気もするけどどうなんだろうか)
良い感じのコントラストが出る。ほとんどのお客さんがリアプロだと気づかないほど。
プロジェクターは単焦点フルHDのBenQ W1080ST
プロジェクターは単焦点フルHDのBenQ W1080ST
忘れちゃいけない外枠 → 構造用アルミサッシがベスト
厚さ5mm、高さ2m以上のアクリルパネルとなるとそれなりの重量になるし、それを人がタッチするとなると結構しっかりと支えなくてはならない。窓のアルミサッシをトラスっぽい感じで支えればいけるんじゃないかなぁと探して見つけたのがこのLECO FRAME。本来は構造用だけど、溝にアクリルパネルがちょうどハマる。赤外線センサーとアクリルパネルにの寸法をもとに図面を用意したら、こちらもミリ単位でビッタリ合わせたアルミフレームを準備してくれた。仕上がりはサスガの構造用仕様。最小限の重量で最大限の強度。パネルがグラつかないようにゴムパッキンなんかも準備してくれて至れり尽くせり。接続部の部品なんかも全部含めて納得の3万4千円。しかもこの枠、奇跡的に赤外線センサーのアルミケースの隙間にちょーどピッタリ入っちゃう!
ジャジャーン!完成!
ということで完成しました。キャスターもつけました。いい感じです。しめて25万9千円也
あとはUSBでPCに繋いでキャリブレーションするだけ!
YES!
YES!
持ち運べる?
YES! 飛行機の預け荷物でもいけます!国内宅急便での輸送は数千円。
セットアップは簡単?
まぁYES! 慣れれば一人で1時間もかかりません
ん〜たぶんYES! 全部で25.9万円。安い?高い?
でも数千円の追加のパーツで横にもなるよ!
でも数千円の追加のパーツで横にもなるよ!
画面サイズを考えたらすごいコストパフォーマンスですね。部屋にスペースがあったら、作って置いてみたくなりました。ただ、ぶきっちょなんで失敗した時に失う銭の事を考えるとガクブルですw
それはそうとCubism個人版、フリー版リリースおめでとうございます!フリー版が出るとは知らなかったので、嬉しいびっくりでした。今はフリー版をいじってますが何とか金を作ってPro版を買おうと思ってます。
何とか特別価格中に買えたらいいですが、難しいかも・・・
長々と失礼しました。