Todateです。Live2D アドベントカレンダー3日目担当です。

Live2Dのイベントではおなじみになっている等身大のタッチパネルですが、先日行われたDigital Contents ExpoSIGGRAPH Asiaに合わせて新しいのを作りました。2015年11月時点で調べた限り、4Kの大型タッチパネルの既製品は日本にないっぽいので、自作を検討している人の参考になればと思い、作り方を公開します。

前回同様、あくまで体験を元にした記事なので、実際この通りにやっても上手くいかないかもしれません。参考にされる場合は自己責任でお願いします!


【 初代、ありがとう! 】

本題に入る前にちょっと初代等身大タッチパネルの活躍をプレイバック。

2年半くらい前、「等身大のLive2Dキャラをタッチで動かしたい!」という動機から82インチの巨大なタッチパネルを作りました。パーツを中国から取り寄せたり、特注したり、自作したりして作った素人感満載のタッチパネルでしたが、これまで国内外のイベントで本当にたくさんの人に触ってもらいました。

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(左上から時計回り)アメリカGDC、CEATECで紹介、MF文庫J夏の学園祭201527万回再生された動画GTMF2015の公式サイネージ

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一番のハイライトは今年の「alive 2015」会場で沢山のユーザーさんのLive2Dモデルを表示して喜んでもらったこと!

度重なる故障や輸送中の事故、「セットアップが大変すぎる!」という内部からの不満などを乗り越えてきた初代も、今年の夏に輸送中の事故でセンサーのコアパーツが壊れてしまったことから、「よし、後継モデルを作ろう!」ということに・・・

初代、お疲れ様でした。そしてありがとう!


【 後継モデルを作ろう → 夢が広がりすぎる 】

社内掲示板で「今夜、等身大タッチパネルの後継モデルについてブレストします。自由参加でーす」とつぶやいたら、デザイナーからプログラマまでスタッフの半数くらいが集結。ブレストではポストイットを使ってアイデアの切り口を見つけたり、ポンチ絵でプレゼンしたり

元来「すごいものを作りたい!」という気持ちが強いスタッフが多いため、ブレストでは斬新なアイデアがたくさん出ます・・・ただし、実現するための時間や労力を忘れて盛り上がってしまうこともよくあり・・・

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夢が広がり、もはやタッチパネルと無関係なアイデアが続出し、夜な夜な大いに盛り上がる。


こういうスタッフに「素晴らしいアイデアだけど、短期間で実現するのは難しいんじゃ・・・」と言うと、弊社推薦図書『ナッちゃん』の金言「出来るかどうかを考えるんやない。どうやったら出来るか考えるんや!」が返ってきてしまいます。

こんな時は「展示会までの1ヶ月間でハードを設計して、組み立てて、表示用のアプリも開発して、肝心のLive2Dの開発に影響は出さない・・・ どうやったら出来るか考えるんや!」で応戦。

すると「うんうん、まずはすぐに実現できる具体的な案にしよう!」となります。


【 緻密に描かれた2Dキャラを動かしたい! 】

とはいえポンチ絵プレゼンで出た案の中でもっとも具体的な案は、結果的にもっともLive2Dらしいものでした。それは「高精細なディスプレイに、緻密に描かれた2Dキャラを表示して触りたい!」というもの。

実はこれに近い内容は、夏に開催された「細田守監督作品『バケモノの子』展」でKayacさんが実現されていて、4Kディスプレイが周囲の印刷物と同化するように置かれ、Live2DキャラがKinectに反応して表示されるというものです。

クリエーターが描いた通りの高精細なキャラクターが動いて、それと遊べたらみんな喜んでくれるのです!(・・・などと偉そうに書いていますが、初代の時も今回の案もishikawa氏の慧眼によるものです)

ということで必要な機能・要素をまとめました:

  • インタラクティブ:タッチでLive2Dモデルとインタラクティブに遊べる。
  • マルチタッチ:ピンチ・ズームもできる。
  • 等身大サイズ:女性キャラはもちろん長身の男性キャラも等身大で表示できる。最低65インチ。
  • 高精細:印刷物と並べられるくらいの高画質。最低4K。
  • 携帯性:イベントに持っていって簡単にセットアップできる。
  • 安全性と堅牢性:みんなが安心して触れて壊れない、傷つかない。
  • 低価格:あまりお金をかけたくない 


【 まずは既製品からチェック 】

市販の大型タッチディスプレイは、初代の企画段階で調べた時こそ重量140kg、価格160万円~ と、全く手の届かない存在でした。しかしあれから2年半、液晶の画質は急激に上がり価格は下がっているので、4Kの大型タッチディスプレイもあるかな~と検索開始。すると、SharpのBigpadが、60インチで43万円、70インチで64万円とだいぶ価格が下がっていましたが、解像度がフルHDしかなく、4Kの大型タッチディスプレイは既製品ではなさそう・・・うーん、今回も自分達でつくっちゃおう!(最初からそのつもり)


----- おまたせしました!ここからが作り方 -----


【 材料(1台分)


【 ディスプレイ - 魅惑の4Kが手の届くところに 】

2年半前は高嶺の花だった4Kも、やっぱりかなり安くなってる!最もコスパが良さそうなのはLGで、今回最低サイズに設定した65インチのモデル(65UF9500)で367,414円(2015年10月時点)。しかも最大4096×2160(60Hz)に対応しているので長く使えそう。なにより嬉しいのが25.5kgと軽量なので自立スタンドの設計と移動、設置が非常に楽(とても重要)! ちなみに同じ4Kでも一つ下の60インチのモデル(60UF8500)なら235,439円、最近発売されたUPQの50インチのモデルならなんと75,000円という安さ!

今回は「等身大」にこだわり、65インチで決定。初代の82インチからはサイズダウンしてしまうものの、このサイズがあれば大体のキャラは実寸で表示できる!

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大型4Kのあまりの美しさに、しばらくは色んなものを映す遊びが流行る。
そしてEuclidのキャラ「メリル」の取り合いが勃発。


【 タッチセンサーは大幅パワーアップ! 】

タッチセンサーは前回お世話になった中国のメーカーに改めてコンタクト。さっそく今回の用途に合う商品とその図面を送ってくれる。

「この図面は正確なのか?」

「いやそもそもディスプレイがまだ届いてないので表示領域の実寸すらしてないぞ!」

「いや、そんなの待ってたら間に合わないぞ!」

「まぁー大丈夫っしょ!」

という具合で発注。

前回同様に広州からDHLで速攻で送ってくれた。ちなみに今回発注したのは赤外線のFB Series。価格は65インチで$350=約42,000円(ちなみに60インチだと$310=約37,200円。Maxサイズは98インチ!)。 これに送料の$140=約16,800円が加わり合計$490=約58,800円

ちなみにこのFB Series、スペック的には前回のL Seriesと比較して大幅にパワーアップしてます:

  • タッチ数:シングル(1点)から10点に増加。ピンチ・ズームなどのジェスチャーにも対応。
  • センサーの幅:36mmから23mmに36%ダウン。厚さも12.2mmから9.5mmに22%ダウン。つまり細く薄くなってカッコよくなった。
  • センサー結線方法:リボンケーブルからピンに変更。リボンケーブルの取り外しは故障の原因だったので助かる〜
  • ドライバー:英語版アリ、Macにも対応。そしてダウンロードページがちゃんとある!(前回はEメールに添付されていた中国語のドライバーを恐る恐るインストールしてた)

(全然関係ないのですが、先日夏休みを使って深センの華強北に行ってきました。凄かった!)


【 タッチ面はアクリルで強化 】

4Kディスプレイとセンサーは揃ったが、沢山の人がタッチすることを考えると裸というのは怖い。そこでまず考えたのが保護フィルム。少し調べただけでもこんなのとかこんなのとか、けっこうありそう。

しかし今回はディスプレイのベゼルが細いこともあったので、画面の保護だけでなくタッチセンサーを固定する土台にもなるアクリル板に決定。ただし注意が必要なのが、ディスプレイの表面は(下のLGのロゴなど)凹凸があるので、アクリルが画面から浮かずに密着するために、凹凸に合わせてアクリルを部分的に薄く削る細かい加工が必要。これも前回お願いしたこちらのアクリル屋さんに図面を出したらしっかりやってくれました。加工賃や固定用の治具も含め34,678円。ちなみにこの設計・製図は、デザイナーでありながら精密機械メーカー勤務経験のあるSevenA氏が担当。さすがの精度!


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画面保護&センサー固定用のアクリルパネルの図面(ちょっと不具合があるので改善の余地アリ) 

あと地味に重要なのがタッチ面となるアクリルの手触り!魅力的なキャラはスベスベしててほしいのにそのままのアクリルはギシギシです。そんな時、サバゲーと艦娘をこよなく愛する
白沢氏が手渡してくれた謎のスプレーを塗布するとなんともシルキーな手触りに!


【 スタンドは構造用アルミサッシ 】

ディスプレイは等身大キャラを表示するので縦置きが基本。ということでスタンドも自作するのですが、これも初代の時に使った構造用のアルミサッシを踏襲。比較的軽量とはいえディスプレイの重量は25.5kg。これにアクリル板とセンサーの重量、そしてタッチした時の応力も考えなくてはいけない。幸いなことに、大型ディスプレイの背面のちょうど良い場所に壁掛けマウント用のネジ穴があったので、それを活用してスタンドを設計。この特注スタンドは固定用の細かなパーツも含めて納得の24,800円。この設計は和服が似合うプログラマt_takasaka氏の協力で実現。

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自立スタンドの図面(これに確定するまでけっこう試行錯誤しました) 
 

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じゃじゃーん!4Kの等身大タッチパネルができたー!
材料費、しめて485,692円(60インチなら 348,917円!


【 ハード完成、でもここからが本番です 】

わーい完成!と言いたいところですが、Live2D的にはここからが本番。高精細のLive2Dキャラを表示して遊べるアプリを作らなくては「わざわざ縦に置いた、ちょっと良さそうなテレビ」でしかないのです。

タスクは沢山あります。テクスチャの4Kスケールアップ、タッチ対応、UI設計、EuclidモデルとCubismモデルの切り替え表示、静止画とモーション切り替え、メモリ管理・・・

そこにサササっと登場するのが、Live2Dも3Dモデリングもできる万能忍者型プログラマのnaotaro氏。サササっとアプリを完成させてくれました。しかもこのアプリの作りかたを明日のブログで発表するらしいので、Live2Dキャラを使ったタッチアプリやユニークな受付アプリを作りたい人は要チェック!


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Unityでのアプリ開発も大画面で!


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SIGGRAPH Asiaのブース。mochaさんに描いてもらった背景にKKUEMさんが描いたキャラが溶け込んでます!
 

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う、うつくしい・・・


【 こんなことに使ってもらいたいです! 】

ということでチームワークで無事に完成した4K等身大タッチパネル、Live2Dユーザーのみなさんに色んな場面で使ってもらいたいと思ってます。イベント展示や受付アプリだけでなく、ユーザーさんによる活用の例として↓↓こんな感じのこと↓↓とかを4K大画面&タッチでやってもらえたら嬉しいです:

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そしてもちろん!来年のalive 2016でもユーザーさんの高精細なキャラをこいつに表示したい!!と思っていますのでお楽しみに!

あ、あとアクリルのグレアを低減させたいのですが、何か良い方法があったらアドバイスください