Todateです。Live2D アドベントカレンダー 21日目担当です。

ご存知の方も多いと思いますが、Live2Dでは毎年、Live2Dユーザーが作品を投稿するコンテスト「Live2D Creative Award」を開催しています。昨年(2014年)に第1回を行い、今年で2回目の開催だったのですが、昨年までは「Award」と名乗るには決定的に足りないものがありました。

それはグランプリ受賞の証、トロフィーです。

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今年(2015年)から登場したグランプリのトロフィー

ということで、今回は「このトロフィーがどんな風にできたのか」というお話です。

【 改めて グランプリ作品紹介 】

本題に入る前に、これまでグランプリを受賞した2作品を改めて紹介したいと思います。

◆◆◆ 2014年グランプリ受賞作品 ◆◆◆
タイトル:ディスタンス「Distance」 
クリエータ: Yuan_Hさん(Jakarta, Indonesia)
 

◆◆◆ 2015年グランプリ受賞作品 ◆◆◆
タイトル: Nekomimi Maid 
クリエータ: kutataさん(Korea) 
 



【 初代チャンピオン(今は中の人)からの切なる直訴 】

まだ歴史が浅いLive2D Creative Awardですが、毎年、世界中のクリエータのみなさんが、たくさんの時間と情熱をかけて作品を作ってくださいます。


「だからこそ、受賞したことが誇らしくなるようなLive2Dらしいトロフィー
 が必要なんだ!!!」


そう切実に訴えかけてきたのは、初代グランプリ受賞者で、今年の春にインドネシアから来日し、今ではLive2Dの中の人として私の隣の席で働いているYuan_H氏です。よし、「受賞したことが誇らしくなるようなLive2Dらしいトロフィー」作りましょう!


【 デザインはおなじみのあのパターン 】

「受賞したことが誇らしくなるようなLive2Dらしいトロフィー」ってなんだろう?と社内で考えた結果:
  • デスクや棚に飾りやすいサイズ(いつも見えるところに置ける)
  • グランプリにふさわしい重量感(金属のどっしり感)
  • Live2Dらしいデザイン
という結論に至りました。デザインについては奇をてらわず、Live2Dユーザーであればみんなが目にするソフトウェアのスプラッシュ画面に使われている陰影のついたポリゴンのパターンをそのまま使ったシンプルなものを準備しました。

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Cubism Editor起動時のスプラッシュ。陰影のついたポリゴンのパターンが特徴


【 10社に問い合わせて・・・ 】
 
シンプルなデザインなので「そのままアルミとかのプレートにいい感じに彫ってもらおう」と軽く考えて金属加工やレーザー加工のサービスを行っている会社に問い合わせてみたところ、


「アルミに加工すると白っぽくなってしまい、陰影をつけることはできません」・・・

「レーザーだと誤差が発生するので非常に難しいです」・・・



といった具合で技術的にかなり難しいらしく、また1点モノということもあり、10社くらい問い合わせて全て断られてしまいました。特にポリゴンのパターンの(陰影の差)を付けるのが非常に難しいとか・・・


【 彫ってダメなら溶かしてみる 】 

表面加工が難しいということで、妥協案として「金属の上にUVインクジェットで印刷する」という方法を検討している時に、金属加工の種類の中に「エッチング」という、彫るのではなく化学薬品を使って金属を腐食させる技術があることを知りました。電子機器のプリント基板や電気カミソリの網などの精密な加工に適した技術らしく、「最後にダメもとで聞いてみよう!」と、相談にのってくれそうな会社を1件だけ探し出し、問い合わせてみました。すると3日後に返ってきた返事は一言でこう書いてありました:


「ステンレス材でしたら作製できそうです」


!!! こんなに難しく割に合わない仕事を快く引き受けていただいたのは、エッチングを専門にされている東大阪のとある町工場。たまたま別件で大阪に行く用事があったので挨拶にお邪魔したところ、工場の中を案内してくださり、フォトマスクやエッチング液を使った加工方法を丁寧に説明していただきました。


【 頑固親父の秘技 】

そんな町工場見学の際に、あの10社に断られた最大の原因でもある「ポリゴンのパターンの陰影」についてどうやるのか聞いてみました。すると実は陰影はエッチングではなく、エッチングで輪郭をつけた後に、別の町工場の職人さんが「磨き加工」という処理で陰影をつけるとのことでした。その詳細については担当の方もわからないようで、


「 わたしらにもどうやってるのかわからんのですわ・・・ あんまりしつこく聞いて
 『ほんならもうやらん!』って言われてもかないませんからなぁ。ラーメン屋の
  頑固親父にスープの作り方聞くようなもんですわ 」


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職人さんの秘技によって施された見事な陰影!


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台座は日本らしく桜の木を使ってDIY。フライス盤を使って加工しました
(先日オフィスを移転したのですが工作エリアができるという噂があるのでフライス盤の導入を期待しています)



【 最終チェック! 】

ということで、Yuan_H氏のグランプリ受賞者ならではの視点、そして町工場や職人さんの技術力のおかげで素晴らしいトロフィーが完成しました。

そしていよいよ、当初の目的である「受賞したことが誇らしくなるようなLive2Dらしいトロフィー」に仕上がっているかどうかの最終チェックを行うのはもちろんYuan_H氏。alive開催の直前でオープニングムービーの制作真っ最中の彼に見てもらいました:

(Todate): 「どうだろう、受賞したことが誇らしくなるようなLive2Dらしいトロフィー
 に仕上がってるかな?」

 
(Yuan_H): 「うん、そうだね! で、去年グランプリのボクのは?

と、とても満足げでした。


【 いよいよ贈呈 】

alive 2015で行われた表彰式では、最初のトロフィーをグランプリ受賞者である韓国のKutataさんに渡すことができました。

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KutataさんのLive2Dを使って作ったアプリ(iOS, Android)は世界的にヒットし、先日なんとラノベ化されました!Live2Dがきっかけてユーザーさんが成功されているのはとても嬉しいです!

そして来年、Live2D Creative Award 2016のトロフィーは一体誰の手に!!!